「入っていい?」

シンさんが控えめに聞いてくる。

その声を聞いた大野さんが立ち上がるから、

「どうぞ」

私が先に答えた。

「何しに来たんですか?」

大野さんの低くて怒りに満ちた声がする。
シンさんは一瞬大野さんを見たけど、そのまま私のベッドに近づいてきた。


「大野さん。少し二人で話させてもらえませんか?」

まるで仕事の打ち合わせのような口調でシンさんが言う。

「そんなことできるわけないでしょ…」

大野さんが一歩近づく。

「最後に二人きりで話がしたい…」

シンさんは私の目をしっかりと見て言った。

あの恐怖を感じさせた目じゃない。
以前の彫刻のように整った顔のシンさんで……

私は大野さんに頷いて合図した。

大野さんはしばらく動かなかったけど、目線をそらすと長い脚でドアから出ていった。

シンさんは、優しく微笑んで私を見ていた。