廊下からの話し声も聞こえなくなると、大野さんは横にあるソファーに座り、小さなテーブルの上にパソコンを広げだした。

「帰らないの?」

心配して聞くと、

「ああ、ここでやる」

慣れた手つきで書類を並べている。

もしかしたら私が寝ている間もそうやってそばにいてくれたのかもしれない。

不謹慎だけど、嬉しかった。

「もう大丈夫だから帰っていいよ」
「気にするな」
「でも…お姉さんは…やっぱりイヤだと思うよ」

一瞬止まった大野さんは、私の言葉には何も答えないで仕事を始めてしまった。
静かな部屋にパソコンを叩く音が聞こえる。


そんな静かな時間に、ふいにドアを小さくノックする音が聞こえた。
大野さんと目が合う。

「はい」

ドアに向けて返事をするとゆっくり開いたドアから顔を出したのは、
シンさんだった。