「これ、3課と4課のみんなから…」

大野さんはさっきの果物セットを棚に置いた。

「果物ナイフがないらしいよ」
「マジか」
「うん。明日には持ってきてくれるかな」
「おばさん。明日も来てくれるの?」
「あ、聞いてなかった」
「おまえらしいな」

大野さんは椅子に座ると、私の布団を直した。

「仕事、どうなった?麻紀さんもいなくて私も休んだら全然進まないでしょ?」
「ああ。おまえが落ちたのは俺の責任だから、俺は降格になった」
「…え?なんでそうなるの?」

一気に背中が冷たくなって、手が震えだす。
大野さんはそんな私の手を両手で包んだ。

「もともと俺には大きすぎた役職だったんだ。南主任が4課の課長になった。当初の予定通りだよ。本当はあの人がやる予定だったんだ」

大野さんが優しく笑っている。

「あの人、4課は本社に作られると思ってたみたいで逃げてたらしい。しばらく鶴見だって喜んでたよ」

大野さんが私の手を握り直す。

「南さんがいればしばらく大丈夫だ。だからゆっくり休め」
「…うん」

泣きそうになるのを堪えて、奥歯を噛んで微笑んだ。