「…帆…」

名前を呼ばれた気がする。
あ、私、寝てたんだ。

目を開けると、目の前に大野さんの顔がドアップであった。
眉間にしわが寄る。

「起きたか?大丈夫か?」
「…い」
「え?なに?」
「…近い…」
「は?俺?」

小さく頷く。

「なんだよ、それ。心配してやってんだろ」

大野さんはそのまま後ろにあった椅子にドサッと座り直した。

どうやらここは病院らしい。

部屋の外から話し声や器具の音が聞こえる。
窓に目をやると、もう陽が高く上がっていて、オレンジ色のビルがはっきりと見えた。

「今、何時?」
「今か?えっともうすぐ1時」
「そんなに寝てたんだ」
「……」
「あれ?会社は?」
「ああ。もうすぐ戻る」
「じゃあ、私も…」
「は?」

起き上がろうとすると、大野さんの腕が伸びてきた。

「もう少し寝てろ。手術したんだぞ。無理すんな」
「……手術?」