メトロの中は、近過ぎです!

メゾネットタイプのシンさんの部屋の2階は、上がったところが広い一つの部屋になっていた。
その真ん中にキングサイズのベッドが置いてある。
シンさんはそこを横切って、奥の二つあるドアの一つを開けた。

「この部屋、自由に使って」

シンさんが私の背中を押して部屋に入れた。
窓が一つだけある。
他には何もない。

「でも、私は…」
「物置になってたから掃除しといた」
「シンさん…」
「今日はもう遅いから明日荷物運んで」
「……」
「明日から仕事行かなくていいから…」

一段と低くなった声は明らかに怒気を含んでいる。
返事なんていらないって、これは命令なんだって、そんな言い方。

「シンさん……」

冷たい目から逃れることもできないで、足元から這い上がってくる震えが全身を支配する。

居た堪れない沈黙が続く。

シンさんが私のことを見ている。
責められている。

仕事行くなとか、本気なんだろうか?
明日から引っ越せって、本気で言ってるんだろうか?

彼は、私が別れを切り出そうとしていることに気付いている。
それなのに、どうして……

「隣の部屋は、今は俺が使ってるけど、子供が生まれたら子供部屋にしようか…」

え、子供…?