「幼稚園の頃?」

ようやく笑いが落ち着いた大野さんは、優しく微笑んでから

「俺だよ。俺が渕上大翔だよ」

ゆっくりそう言った。

ーーーふちがみ はるとーーー

「えーーー!」

私の初恋の人で、小学校に入ってすぐに転校した人

「待って。でも大野さんは違うって言ったじゃないですか?最初の、歓迎会の時に、飲み会の席で」

「あんなところで言えるかよ。しかも、おまえが泣き虫はると君とか、初恋の人とか言ったあとだぞ。そんな時に言えるかって」

そう言われてみると、確かに言ったかも……。

大野さんは急に立ち上がると、一万円札をつかんで

「俺がツマミ買ってきてやるよ」

そう言い残して嬉しそうに部屋を出ていった。