メトロの中は、近過ぎです!

「美味しっ」

一口飲んだだけなのに、桜舞はその甘くて濃厚な味で幸せな気分にさせてくれる。

「旨いけど、これ、女向けだな」

そう言いながらもグイグイ桜舞を飲んでいく大野さん。
その上下に動く喉仏がやけに色気があって目が離せない。

「なんだよ」

見つめていたことに気付いた大野さんが睨んでくる。

「いや、文句言ってるのに美味しそうに飲むなーと思って……」

見とれていたなんて言う訳にはいかない。
私はまた一口、桜舞を飲んだ。

「おまえ、こういうの好きだろ」
「そうですね。これまで飲んだお酒の中で一番美味しいと思います」

お世辞ではなかった。

あの人たちが一生懸命造っているところを知っているからか、余計に美味しく感じる。
こんなにお酒が美味しいと思ったのは、本当に初めて。

私は空いた二つのグラスにまた桜舞を注ぎ足した。