メトロの中は、近過ぎです!

「かなり参考になったな」
「そうですね。取り入れたいことばかりでしたね」

温泉と食事後のゆったりとした時間。
お互いの話すスピードもゆっくりになる。

「桜酒造さんの考え方、良かったよな」
「あのセット売り良かったですよね。
うちもカーペットとカーテンとかのトータルコーディネートでセット売りとかできそうですよね」
「……」

妙な間に大野さんを見たら、私をじっと見ている。

「なんですか?」
「それいいな」
「そうですか?」
「じゃそのセット売りの担当おまえな」
「え?」

いきなり仕事モード?

「言いだしっぺがやるのは当然だろ。イヤなのか?」
「いえ…ただ仕事が増えるな~って…」
「やれよ」

大野さんがニヤリと笑っているから、私もニヤリと笑った。

「はい。やります!」

右手を挙げて宣誓した。
やっぱり私は仕事人間かも…
認められたら嬉しいし、そして私が考えたことが成功するのを見たい。

ううん。成功させたい!

「うわー、戻ったらやることいっぱいですねー」

私のオレンジ色のシンプルなスケジュール帳に
『セット売り リストUP』

の、文字が加わった。