メトロの中は、近過ぎです!

大野さんの読み通りにお昼前にはお世話になる酒造メーカーの 桜酒造さんに到着した。

家族経営と聞いていたけど、その工場は大きくて中では20人くらいの方たちが仕事をしている。

「お世話になります」

大野さんが桜酒造のご主人に挨拶する。

「よういらっしゃったね。お疲れでしょう。どうぞ中で休んでください。私はちょっと出てきます」

私たちに奥の方を示すと、ご主人はその外見からは予想できない速さで外に出られた。

奥からは細身の上品な奥様が顔を出されていて

「どうぞ、こちらに」
「よろしくお願いします」

大野さんと二人で頭を下げると

「お昼はもう召し上がった?」

と聞かれた。

「まだでしょう?簡単なものだけど、用意しといたの。どうぞ」

そう言って案内された先は大きいテーブルが二つ並んだ食堂だった。

「もうすぐみんなも休憩になるんでちょっと待っててね」

奥様はその横のキッチンに立って、忙しなく動いていた。