メトロの中は、近過ぎです!

シンさんから返信はなかった。

真っ暗の画面を見つめたまま固まっていると、

「行くぞ」

いつの間にか大野さんが戻ってきていた。

さっきまでのはしゃいだ気分は全く無くなって、黙って車窓の景色を見ていた。


「さっきの末岡さんから?」

驚いて隣を見ると、大野さんは無表情に前を向いて運転していた。
大野さんの口からその名前を聞くのも辛く感じてしまう。

「…はい。出張に行くと伝えました」
「そしたらなんて?」
「えと…、一人かって聞かれました」

大野さんが一瞬こちらを見る。

「それで?」
「え?」
「それでなんて返事した?」
「一人って答えました。…すみません」

悪いことをして、見つかったような居心地の悪さ。
どうして嘘をついてしまったんだろう。

「バカ。それ絶対ばれてるぞ」
「え?」
「いきなり一人って聞かないだろ。普通はどこに?とかいつまで?とか…聞くならそっちだろ」
「……っ!」

一気に冷めた頭で、自分がやってしまった過ちに気付いた。