「電気点けますか?」
「いや、いい…」

非常灯と外からの灯りで室内はそれなりに見えるけど、これでは書類は見えないと思う。

大通りの信号機の光が、一階の大きなガラスと事務所の窓を通り越して、室内をカラフルに染めている。

ソファーを出し終えた大野さんは、そこに座り足をくんでくつろぎ始めた。
まるで一人で来たかのような雰囲気。

「今日、楽しかったですね」

私の存在を主張したくて話しかけてみたけど

「そうだな」
「時々3課と合同飲み会やりましょうね」
「あぁ」
「……」
「……」
「大野さん。なんでここに来たんですか?」
「なんでだろうな…」

すっかりくつろいで目まで閉じているその姿に、何かを投げつけてやりたくなった。

「真帆…」
「……は、はい」

不意打ちの名前呼びは、心臓に悪い。

「3課に戻るなよ。4課にいろよ」

さっきと空気が変わってる。
さっきまで笑って走ってたのに……
そんな切なげな声で言われたら、イヤだ、なんて言えない