背の高い扉を押して中に入ると、吹き抜けのロビーに受付の机みたいなものが置いてある。

大野さんがその後ろにある階段を上って行く。
置いて行かれないように慌てて階段に近寄った。

1階の天井が高いせいか、やけに長い階段を上りきると、事務所の入口が見えた。

すりガラスの扉を押して中へと入っていく大野さんに、もう一度「本当に入っても大丈夫ですか」と聞くと「問題ない」とだけ言われた。

中にはほとんど何もなかった。

ガランとした事務所の窓から下を覗くと1階部分が見える。
どうやらここから店内の様子が見渡せるようになっているらしい。

下の展示場にもほとんど何もない。

大野さんを探すと、隅の方に重ねて置いてある応接セットのソファーを引っ張り出していた。

「ここから下がよく見えるんですね…」

窓の下の1階部分の先には大きなガラスが外との世界を遮断していて、そのガラスの先には大通りが通っている。
その先にあるビル群の灯りも綺麗に見えていた。