メトロの中は、近過ぎです!

「課長はミスしてもフォローなんかしないですよ。フォローしてくれるのはチーフや南主任ですし、課長がやることと言ったら飲み会の最後に、帰るぞー、っていうくらいですね」
「おまえが気付いてないだけで、松尾さんはまとめてるんだって…」
「うーん。まとめられた気もしないですけど……ただ課長には笑っててほしいなぁとは思いますけどね」
「なんだよ、それ…」
「あんまり悩ませたら、課長の髪が更になくなるでしょ?みんな、それは可哀想だなーと思ってるんじゃないですかね」
「はっ。おまえに相談した俺がバカだった」

大野さんは空になったグラスをドンと置いた。

「おかわりー」
「はいよー」

大野さんの声が大きくなった。

「大野さん。もしかして4課をまとめようとしてるんですか?」
「今さら何言ってんだよ」
「大野さんが松尾課長の真似してもダメですよ。だってハゲてないですもん」
「はぁ?アホか」

「こんばんわ~」
その時、南主任と伊藤チーフが入ってきた。

「チーフ。遅いですよ」
「ごめん、ごめん。あれ?大野、焼酎なの?」
「はい」
「じゃ、俺も焼酎にしよ」
「主任いきなり焼酎ですか?」
「じゃあ、焼酎とビールねー」

伊藤チーフのよく通る声が店内に響く。

「主任、聞いてくださいよ。大野さん、課長になりたいみたいなんですよ」
「は?出世したいのか?」
「違いますよ」

大野さんが慌てて否定している。

「松尾課長が3課をまとめてるって話ですよ。そしたら佐々木は課長がハゲてるからだとか訳わかんねーこと言ってるし……」

ぶっ!
主任とチーフが吹きだした。

「佐々木、意味わかんないよ」

チーフに背中を叩かれて、

「4課を、3課みたいにまとめたいらしいんですよねー」

私がむせながら言うと、

「あぁ。大野。そりゃ無理だ」

南主任が一言で終わらせた。