「チーフ。行けそうですか?」

私はすぐに3課のオフィスに来ていた。
まだ残っている自分のデスクに座り、前の席のチーフに話かける。

「もうちょっとかかる」

冷たく言われた。

南主任も同じくまだ終わらないらしく、早々に準備して3課に来ていた私と大野さんが浮いている。

「先、行ってるか…」
「そうですね」

あまり気は進まなかったけど、先に白虎に行くことにした。


「お疲れ」
「お疲れ様です」

カチンとビールのグラスを合わせた。

「……」
「……」

微妙な空気が流れる。

「大野さん。やっぱり新しい神奈川のオフィスにはショールームができるんですか?」
「あぁ。そうなるだろうな」

当たり障りのない仕事の話ばかりしていた。
お互い本心は出さずに探りあっているような、そんな気が抜けない会話。

大野さんの二杯目のグラスが空になっている。

「大野さん。今日ピッチ早くないですか?」
「飲みたい気分なんだよなぁ」

ポツリとつぶやいたのは、それが本音だからだろう。

「すいませーん。ビールと、あと梅酒ー、ロックで」

カウンターの奥から「はいよ」という明るい声がした。

「梅酒?ワインじゃないのかよ」
「はい。私、あんまりワイン飲めないんです」
「は?おまえ喜んでただろ」
「大野さん、飲みたかったらワイン頼みましょうか?」
「……焼酎…」
「え?」
「俺もワインより焼酎派」

二人で目が合うとニヤリと笑った。

「すいませーん。ビール、キャンセルで…焼酎、お願いしまーす」