コンコン

4課の扉をノックする音がする。

振り向くと課長が顔を出していて、

「大野。電話だぞ」

4課にはまだ電話がない。

携帯があるからそんなに不自由はしないけど、4課は今のところ3課の電話を使わせてもらっていたから、時々こうやって3課の誰かが電話を取り次いでくれる。

大野さんと課長が3課に行ったあとは、静かになった元会議室で集中して入力作業をしていた。


「佐々木。飲みに行くか?」

戻ってくるなり大野さんがいきなり誘ってきた。

「え?」

驚いて振り向く。

一瞬交わされた視線に思わず目を逸らした。

「南主任と伊藤さんがそんな話してた。おまえも行くか?」

「行きます!すぐ行きます!」

久しぶりの3課での飲み会。
もう仕事なんてしてられない。
書類を片付け始めた。

「おまえさっき、俺が誘ったと思って警戒しただろ」
「……いいえ」

こんな時、本心は言わないのが大人の対応。

「…ふん」

そして、真実を追求しないのも大人のルール。