カタカタとパソコンの音が聞こえてきた。
チラリと大野さんを見ると、やつれているように見える。

「大野さん、コーヒー淹れましょうか?」
「あ?あぁ、頼む…」

その覇気のない言い方に胸が痛んだ。
私には分からないところで、いろいろと大変なのかもしれない。

「はい、どうぞ」

大野さんのデスクにコーヒーを置く。
ついでに淹れた自分のコーヒーを持ってデスクに戻った。

「佐々木。まだ終わらないのか?」
「これが終わったら帰ります」
「無理するなよ」
「大野さんこそ」

すごく久しぶりに大野さんと会話をした気がする。
毎日会っているのに、近くにいたのに……

「佐々木」
「はい」

顔をあげると大野さんがこっちを見ていた。

「おまえらいつから中川さんと仲良くなったんだ?」
「中川さんとですか?いつからかな…あ、大野さんちのパーティーの後です」
「飲みに行ったのか?」
「はい。でも3人でですよ。2人じゃないですよ」
「そんなこと聞いてねーよ。用事があったんじゃないのかよ」
「……あ…」

しまった。

戸田君は用事があるって言ってパーティーを抜けたんだった。

「だろうと思ったよ」