「待ってくれよ。俺も連れて行ってくれ。この辺のこと教えてくれよ」

明るい中川さんの声が聞こえてきた。

「兄さん!」
「兄さん。どこか行きたいとこありますか?」

私も戸田君も一歩戻った。

「う~ん。旨いラーメン屋はある?」
「あ、それなら俺知ってます。北さんに連れて行ってもらったことがあるんです」
「場所、分かるの?私は覚えてないよ」
「え?真帆さん覚えてないんですか?」
「うん。全く」

一瞬睨み合う私と戸田君。
お互い「なんで覚えてないの?」って相手を非難してる。

「はは…ならもう一度北御門さんに連れて行ってもらえばいい。俺は北御門さんと話してみたかったんだ」

中川兄さんが気を利かせてくれた。

「いいですね」
「本当は伊藤チーフと話したいんじゃないですか?」
「はは…それは内緒だよ」
「そうですね。ランチ行ってきまーす」
「行ってきます」

明るい気分でそう言えたのは中川兄さんのおかげだ。

戸田君と目があってお互いニッコリ笑った。
戸田君も同じこと考えてたようだ。