二人でスキップでもしそうな勢いで駅に向かっていると、後ろから走ってくる音が聞こえる。
振り返ると、あんまり話をしなかった本社から来た中川さんが追いかけてきていた。

「はー。追いついて良かったよ」

戸田君と顔を見合わせた。

「どうしたんですか?」
「俺もあの雰囲気が苦手で…」

控えめにそう言うと中川さんは、ニッコリ笑った。

「どっか居酒屋で飲み直さないか?ビールと枝豆があってガヤガヤしているところで」
「いいっすね。それ」

この時から、戸田君と私は中川さんのことを「兄さん」と呼ぶようになった
本社組だと敬遠していたけど、兄さんはとても面白くて、伊藤チーフに片思いしていた時期があると教えてくれた。

戸田君と「伊藤チーフのセクシーショット」の話をすると、一万円出すからそれが見たいと言って笑った。

私たちはガヤガヤした居酒屋で終電ギリギリまで一緒にいた。

帰り際にスマホを見ると、シンさんからLINEが入っていた。

『明日、帰るよ。何してる?会いたい』

思わずスマホを握りしめた。

『会社の人たちと飲んでました。明日は何時に到着ですか?』

電車の中でも顔がにやけるのを押さえられなかった。

すぐに返信がきた。

『こんな時間まで飲んでたの?遅すぎだよ。今後はもっと早く帰るように(笑)明日は羽田に13時頃に到着予定』

『お迎えに行っちゃおうかな。いいですか?』

『来てくれたら嬉しい』

『行きます!』

明日は何着ていこう。

そのことだけ考えるようにした。