そうして事ある毎に誰かが私に報告してくれる、興味のない高橋の情報を…

「高橋主任。別れたそうですよ。例の彼女と…やっぱりまだ佐々木さんのことが忘れられないんじゃないんですかね?」

これだから社内恋愛はするもんじゃない。

いつまでもいつまでも付きまとう。

「もう関係ないですから…」

本気でそう答えてるのに、いつも佐々木は無理をしていると思われている。

これまで働き続けられたのは、3課のみんながいてくれたからだと、改めて仲間に感謝した。

「もう、森田君。そんな佐々木ちゃんの古傷に触れないの。大野さんがついてこれないでしょう?」

麻紀さん。そんなときでも、私より大野さんへの気遣いですか…

はぁ~。
なんだか具合が悪くなった。
飲み慣れない高級ワインに酔ったのかも…


「話の途中ですみません。俺、今日ちょっと用事があって…大野さん、申し訳ないんですがお先に失礼していいですか?」

戸田君が立ち上がった。

「真帆さん。やっぱり駅までの道、覚えられなかったんでついてきてもらえませんか?」
「うん。いいよ。大野さん、すみません。私もお先に失礼します。麻紀さん、片付け手伝わなくてすみません」

一応謝ると、麻紀さんは嬉しそうに
「大丈夫だよ。あとはやっとくから」
と見送ってくれた。

大野さんは何も言わなかった。

私たちは高級マンションをあとにした。

外に出ると二人で胸いっぱいに空気を吸い込み、そして笑った。

「はー。なんっすか、あの空気。もうちょっとで窒息しそうでした」
「戸田君。ありがとう。私も限界だった」