それも残念なことに、誰が言い出したのかはわからない。
だけど気づいたらわたしは"霧夏の姐さん"で。
中学生の頃はずっと、「なるみさん」だったのに。
むしろそのままでよかったのに、高校生になって衣沙がトップになったと同時に、そういう呼び方に変わってしまった。
カムバック時間。
できれば本名だったあの頃にもどりたい。
なんて言い続けているのに、もう1年。
春の訪れはわたしたちを2年生にしてしまった。
「そういう呼び方でも受け入れてくれる人を探すとか」
「どうやってだよ。
……俺は彼女がそういう呼び方されてんのヤだけど」
「ねえあんたのせいだって知ってた?」
衣沙と一緒にいるから、こうやって呼ばれるようになった。
それだけじゃない。衣沙がいつも女の子と遊びに行っているから、霧夏に衣沙の姿があることなんてほとんどない。
その代わり、と言ってはなんだけど。
ずっとトップがいないなんて問題だから、わたしが霧夏に顔を出してる。
そのせいで、姐さんと呼ばれるようになった。
……ああ、まったくもって解せない。
「っていうか、たまには霧夏に顔出しなさいよ」
「だから出してるじゃねえの。たまに」
「トップやめちまえ」