「なるみ、さっき言ってた百貨店でいーの?」
「うん、お願いします」
「ん」
ぽんとわたしの頭を撫でてから、車を動かす流くん。
……さっき駅前に来る前もすこし乗せてもらったけど、昔から知ってる人が運転する車に乗せてもらうのって、不思議な感じだ。
「……そういえば、なるせ」
うしろを振り返って、弟を見る。
姉から見ても麗しいなと思うから、別に何がだめだとかそういうわけでないんだけど。
むしろいつかはそうなるんだろうなって、ちょっと思ってたけど。
いきなりだと、心の準備ができないもので。
「彼女できたの?」
聞いたわたしに、一瞬くっと言葉を詰めたなるせ。
それからわたしをちらっと見て、「いるよ」と小さく一言。
「なんで知ってんの?
衣那兄と衣沙兄のどっちかに聞いた?」
「ううん。この間見かけた」
「……どこで?」
「霧夏から帰る途中。
話し掛けようかと思ったけど邪魔になるからやめたの」
中学からも家からもすこし離れた場所だったから、彼女を家まで送っていたのか。
それとも放課後どこかでプチデートでもしていたのかは、知らないけど。