朝、担任と電話で話した時、

「無理して来なくていいですよ。」

「私もどうしていいか分かりません。」

「いいご身分ですねぇ。」

その何十倍も良い事や優しい発言をしてくれているのに、私の心の網目は小さく、最後の一言に反応して、胸はシクシク痛んだ。

それでずっと、恋愛ジャンルの【あの夏の永遠】に、手をいれていた。

そしたら、無くしている記憶の断片が一つ、ムクッと、コンクリートを押し上げてくるように顔を出した。

ケイが一度、私がいつかは死んでしまう(寿命でも)事にとらわれて、激しく何時間も泣いた時の顔が浮かんだら、何かとかぶってきた。

それはマンションのまわりの部屋に響きわたるような、あの人の号泣だった。

ケイのあの時の泣き顔と、その記憶の断片が、ものすごくパラパラ漫画みたいに浮かんだ時、体を突き抜けるような感覚が来た。

大声をあげそうになった。

叫びか、悲鳴かわからない。

その時、座っていた体が力が抜けた。

失神という現象。

ジェットコースターでまっ逆さまになっているあの感じの後に、落ちる時の感じが、それとそっくりだった。