かといって、距離は長いわけではない。 短距離走レベルだ。 幸い、あたしは相手の行動を読める。 それなら、下手な小細工や罠を仕掛けずに、直球勝負で臨んだほうが、ずっと早くて楽だ。 「捕まえろっ!」 強盗犯が不良集団を引き連れて、あたしの元に詰めかける。 ぎりぎりまで、次の行動を見極めろ。 あたしは集中しながら、不良たちを華麗にかわしていった。 「すばしっこいやつめ……!」 誰かが、苛立ちを孕ませて呟く。 誉め言葉として受け取っておくよ。 じゃ、お先に。