番犬男子






「ねぇ、稜」



心地よい沈黙を、裂く。



「左目の視力がないって、本当?」


「ああ」



すぐに肯定が返ってきた。


本当なんだ。

噂も侮れないな。



「片目の視力がねぇっていう弱点を敵に知られたら、ここぞとばかりに弱点を突いてくんだろ?それが嫌だから、最初っから隠してんだ」



後ろ首をかきながら、稜にしては珍しく饒舌に続けた。



言い訳してるみたい。


あたしにしたって意味ないよ。



「それ、嘘でしょ」



さっきその左目を指摘されても、微動だにしなかったじゃん。


それに、そもそもあたしを欺けるとでも?