「…秋樹こそ」
「え?」
驚いた顔をしてこっちを向く秋樹を横目に、今度は私がバレーの試合を見たまま呟く。
「何も、教えてくれないじゃん…」
「…何が?」
「何でもないよ、忘れて」
眉を下げて、少し泣きそうな顔して。
そんな顔されたら、それ以上何も言えるわけないじゃないか。
その後、お互いに他愛のない話ばかりして、審判が終わって。
次が私の女子バレーの試合があったから、すぐに別れてしまった。
何でもない話ならできるのに、大切な話ってどうしてこんなに緊張するんだろう。
おもしろい話して笑ってる方が楽で、自分が傷つくかもしれないことは簡単に聞けない、弱虫。



