「…沢」




あーあ、手を伸ばせばその背中には簡単に触れられる距離にいるのに。

それなのに君は、遠いなぁ。




「…有沢 芹奈!」





大声で先生から名前を呼ばれ、驚いて顔を上げる。



「お前、入試終わったからってぼーっとするな」


怒り顔の先生に、すみません、と謝る。



「有沢のことだから、どうせ今日の夕飯何かなーとか考えてたんだろ」




男友達のコウのからかう声に、




「そうそう、ハンバーグだったらいいな…って、そんなこと考えてないし!」





そう返せば、みんなが笑ってくれる。

先生も呆れたように、「ハンバーグだといいな」なんて授業を再開した。