「あの、高嶺くん…ちょっといいかな?」
いつも通りの朝。
まだチャイムも鳴っていないからみんなで集まってお喋りしていると、隣のクラスの女の子が高嶺に話しかけた。
「ああ、うん。大丈夫だよ」
「話したいことがあるから、来てくれる…?」
うつむいた顔に赤らめた頬。
きゅっとスカートの裾を握る小さな手は、少し震えている。
ごめん、行ってくる、と小声で私たちに謝って彼女に続いて教室を出る高嶺。
それを見送る私たち。
こういうのが、最近多い。
しかも高嶺ばっかり。
卒業まであと6日しかないから、校内中でこんな呼び出しは増えているはずで。
まあ私のもとには、何もないんだけれど。