「…秋樹」

「…なに、芹奈」

「…なんでもない」





君だけが呼ぶ、私の名前。

私だけが呼ぶ、君の名前。





右耳から聞こえる芹奈って響きが、私の身体中をしあわせな温度で染めてくれる。


この時間を、一生忘れないように。




私が彼氏なんかすぐできちゃうようなイイ女になっても、時間が経ってヨボヨボのおばあちゃんになっても、ずっと心の奥で生き続けるように。



皆川 秋樹という人が、私の心の中にこんなにも深く存在したことを、忘れないように。



この空気さえも覚えておきたくて、深く息を吸った。