「…うん、」



「合格して、すごく嬉しくて、芹奈に1番に報告しようと思ってたんだけど…


…芹奈の顔見たら、なんか言えなくて。


東京に行くって、言いたくなかった」




「…ん、」




「芹奈にだけ言わなかったんじゃなくて、

芹奈だから、言えなかった」




「…そっか」





温かいけれどどこか冷たい春の風が、私たちの髪を揺らして。


乱れた髪を耳にかけたら、秋樹も同じ仕草をしていたのが嬉しかった。


私たちの髪を同じ風が揺らしていることが、幸せだった。





「…秋樹」



「うん」




「おめでとう」






ああ、やっと、言えた。