「じゃ、頑張れよ!」




にっ、といつものように白い歯を見せて笑って、手を振りながら校舎に戻るコウ。

そして、ゆっくり歩いてくる秋樹。

ふたりでベンチに並んで座った。





「…芹奈、ごめん!」




頭を下げた秋樹に驚いて首を振る。




「いや、こっちこそ、勝手に怒ったくせに避けたりしてごめん…」



秋樹は私の目を見て、






「俺、春から東京の芸術大学に行くんだ」






はっきりと、そう言った。



ああ、本当に。

本人の口から聞いてしまったら、目をそらすことなんてできない。

本当に、東京に行っちゃうんだ。