「コウの方がすごいよ。
コウの方が偉いよ。
私なんかよりずっと優しくて強くて、素敵だよ」
なぜか涙が溢れてきたのは、私の方だった。
ぼろぼろ涙を流す私を見て、コウが歯を出して笑う。
「なんで有沢が泣くんだよ」
「わかんない…」
「いや、これ、悲しい話じゃなくてさ。
そんなことがあったから、二年生の時も上手くやってたしそれなりに楽しかったけど、高校生活にそんなに期待してなかったんだよね。
でも3年生になって、みんなに出会った」
コウは懐かしそうに、幸せそうに目を細めた。
「5人でいるのが楽しくて、その時間全部が宝物で、幸せで。
有沢と、高嶺と、アッキーと、柊香。
みんなのおかげですっげー楽しかったって言う、ハッピーな話だから」
ニッと笑ういつも通りのコウの顔が、やけに大人に見えた。



