「虐めは防げたけど、その虐められてたヤツも俺とは話そうとしなかった」
「そんな…」
「いや、それはいいんだよ。また標的になったら嫌だろうし、他のみんなだって同じだったと思う。
それに虐めてた人たちもクラス替えで離れたし、大人しくなったし、2年生からは楽しかったんだけど」
その瞳は少し苦しそうで。
こんな大人なコウの表情は初めて見て。
心の芯が強くて大人だけれど、触れたら壊れてしまいそうなくらい弱く感じた。
学年の人数も多くて、コウと1年生の時クラスは離れていたから、全然知らなかった…。
「有沢、高校生活で後悔してることあるかって話したの覚えてる?」
「…うん、覚えてる」
きみとキスをしなかったこと。
それが私の後悔で、コウにもそれはあるのかなと思って聞いてみたのは、球技大会の時だっけ。



