「……行かないで」





あの日触れなかったその唇。


もしも触れていたら、何かが変わっていたかな。


あの時私たちキスしていたら、どうなっていたのかな。


今となってはその答えは永遠に分からないけれど、でも。



私はあれからずっと、そんな無意味なifばかり考えているよ。





「ここにいてよ……」





ずっと、ここにいてよ。




秋樹は東京に行ってどんな生活をするんだろう。


何を見て、何を食べて、何を綺麗だと思うんだろう。


どんな素敵な写真を撮るんだろう。


秋樹の彼女になるのは、どんな人なんだろう。



……私のこと、思い出してくれる瞬間はあるんだろうか。