「…え、本当に寝たの?」
「…」
返事の代わりに、寝息が返ってくる。
…秋樹って、意外とよく寝るよね。
授業中だって、私と違って先生にバレないから怒られないだけで、しょっちゅう寝てるし。
今だって、こんな短時間で寝るなんて、秋樹のほうが寝不足なんじゃないの?
…そういうところが可愛いだなんて、私おかしいかなぁ。
「あーき」
「…」
体を起こして、起きる気配のない秋樹の顔を覗き込む。
白い肌に、長いまつ毛が影を落とす。
ドッジボールで熱くなったのか、少し緩められたネクタイ。
ワイシャツの襟から覗く首筋だって綺麗。
そんな寝顔を見ていたら、不意に泣きそうになった。
秋樹が、私のものだったらいいのに。
私が、寝ている秋樹に触れても許される女の子だったらいいのに。
秋樹がずっと、この街にいればいいのに。
秋樹が、秋樹が……。



