「…ねえ、秋樹。あの日、さ」
「あの日?」
「プールサイド、で」
私と、キスしようとした?
ずっと、聞きたかったその言葉は喉元まで出てきたけれど、口には出せなかった。
それを聞いたら、全てが終わってしまう気がして。
きっと秋樹にとって私は特別な女の子じゃない。
私が一方的に秋樹を見ているだけで、秋樹は私を見ていない。
私が勝手にひとりで秋樹に溺れているだけで、秋樹は私を想って苦しくなったりしない。
きっと、その程度の存在だったんだって。
東京に行くことを私だけ知らなかった。
その事にこんなにもショックを受けるなんて、私、本当はかなり秋樹に期待していたんだなぁ。



