「…強がりすぎ」
ふっ、と呆れたように、でもとびきり優しく笑う秋樹に、目の奥がじんわりと熱くなった。
胸の奥がふわふわして溶けてしまいそうになる。
「お姫様抱っこじゃ恥ずかしい?」
「うん…」
「じゃあ、背中乗って」
「ありがとう…」
秋樹の背中は、あったかくて。
いつもよりも高くなった視線、この高さから秋樹の世界は見えているんだなって思って。
目の前にある秋樹の髪は太陽に透けて少し茶色く縁取られて、近づけば微かにシャンプーの匂いがして。
ドキドキして、この心臓の音が背中から秋樹に伝わってたらどうしようって不安になって。
……それから、行かないでって、思った。



