「芹奈ー?
いつまで寝てるの、遅刻するわよ!」


「うーん…」



一階のキッチンから聞こえるお母さんの声に、曖昧な返事をしながら、ベッドの上で寝返りを打つ。


時計を見れば、8時25分。

家から学校まで15分かかるとして、あと20分で家を出ないと間に合わない。

目は覚めてる…というか、昨日から全然眠れていないんだけれど。

でも、どうしても体が動かない。




「……」



秋樹が東京に行ってしまう。


それを知った昨日の放課後、あれから秋樹とどんな話をしたのかよく覚えていない。


私は作り笑顔で、他愛もない、たとえば授業中に足元に虫がいて大変だったとか、そういう話をした気がする。