「…あ、この部屋」
使われていない空き教室。
見覚えのあるその部屋に、思わず声が漏れた。
「…あ、ここ、芹奈がメイド服…」
「わー!お、覚えてたの…!?」
「当たり前でしょ」
そう、あれは文化祭の準備をしていた日。
メイド、執事喫茶という、まあ定番だけど盛り上がるだろうという案になったのはいいけれど。
準備日の放課後、ネットで注文していたメイド服と燕尾服が届いたため、クラスのみんなで実物を見ていたら。
「有沢はメイド服ってより執事のが似合いそうだな」
「たしかに、メイドって柄じゃねえ」
なんて男子たちが笑うから。
私だって一応女の子だからちょっとだけメイド服着てみたいとか思ってたし、そんなこと言われたら流石にショックを受けないわけないんだけれど。



