あの夏の日から。
きみとキスをしなかったあの日から。
もうふたりで写真を撮ることなんてないと思ってた。
びっくりして、とびきり嬉しくて、あの日のことを思い出してちょっぴり切なくて。
放課後、みんなに先に帰ってて、と断ってからふたりで校舎を歩き回る。
「何かのコンテストに応募するの?」
「いや、卒業前に撮っておきたいなと思って」
そう言ってカメラを構えるその横顔は、どうしてこんなにキラキラしているんだろう。
そのレンズに、その瞳に。
何が映っているのか、知りたい。
「芹奈も撮ってみてよ」
そう言って私に貸してくれたもう1つのカメラ。
本格的なカメラなんて全然触ったことのない私に、シャッターの切り方とか初歩的なところから教えてくれた。



