「…伝えたらいいのに」


「でも私…5人でいる時間が何より大切だから…どうしても、壊すのが怖いの」




寂しそうな顔をする柊香に、まだ迷いがあるのは明白だ。


きっと、もう涙になって溢れて来てしまうくらい、コウへの想いは積もっているんだろう。


だけどきっと、大人な柊香は高嶺の気持ちも知っているから。

だからこそ、人を傷つけてまで、この関係を壊してまで、一歩踏み出すことができずにいる。



なんて声をかけていいかわからなくて、黙ったまま柊香と並んで、中庭の、やっと咲き始めた薄ピンク色の桜を見つめる。




「……柊香」





後ろから聞こえた声に、ふたりで驚いて振り返る。



「たか、みね」