部屋の前に着き、そっと御簾のすき間をのぞくと、あの女がどこか一点を見詰めて、黙って座っていた。 声をかけようと息を吸って…そのまま止めてしまった。 キラリとひとしずく、彼女の頬を滑っていったからだ。 彼女は泣いているのに、私は慰めようとは思わず、むしろもっと見ていたいと思った。 泣いている姿さえ、憂い顔さえ、美しい… いや、愛おしい。 きっと、ひとめぼれだ。 この女は、私の心を掴んで離さない。 どうしたら近づけるだろうか。