満月の夜に兄上に連れられてやって来た女は、名を輝夜というらしい。 月が明るくて眠れなかったので、気に入りの木に登って月見をしようかとしていたら、彼女を見かけた。 綺麗だ、と思った。 兄上の婚約者も、この辺りでは有名な美人だが、それを上回るだろう。 …それにしても、奇妙な女だ。 見たことのないほど繊細で豪華絢爛な柄の着物や帯、装飾を身につけている。 その服装から、何不自由なく暮らしているのだろうと容易に想像できるが、彼女は憂いた顔を浮かべている。 ……しかも、よく見るとずぶ濡れだ。