「俺、嫌いなんて言ったっけ?」


凪の言葉は肯定でも否定でもなかった。

美優はそっと胸をなでおろした。


「言ってないけど……」


凪の行動を見ていたら、そう思うって、なぜか言えなくて、美優は口ごもった。


「嫌いじゃねえよ」

「だったら……私といてほしい」


嫌いじゃない、と言われて少し調子に乗ったかもしれない。

こんなこと言ったって、凪が賛成してくれるわけがない。


「それは無理だな」


……やっぱり。


理由も、なんとなくわかってるつもりだ。


「どうして?やっぱり、私のことが嫌いなの?」


しつこいとわかっていながらも、また同じことを聞いてしまう。

結局は、凪に一緒にいようと言ってほしいだけなのだ。


「俺と一緒にいたら、お前に迷惑かけるから。実際、お前に怪我をさせたし、不良扱いまで……」

「私、そんなこと気にしてない」


凪の言葉を遮る。

聞きたくないという思いもあった。


「お前が気にしてなくたって、俺が気にするんだよ。今もまだ、残ってるんだろ?左腕の傷」


返す言葉がなくなった。

包帯こそ必要なくなったけど、はっきりと傷痕がある。


「それがなによりの証拠なんだ。わかったら、二度と俺の隣にいたいなんか、思わねえことだ」


凪はそれだけ言うと、一人で校門をくぐった。

美優は逆に、立ち止まってしまった。

予鈴が鳴っているのに、足が動かない。


「凪君の隣にいたいって、思うことはいけないことなの……?」

「君のその願い、僕が叶えてあげるよ」


校舎をぼーっと眺めていたら、いつの間にか美優の背後に誰かが立っていた。

そして、その人は美優が反応するよりも先に、美優の腰あたりにスタンガンを当てた。


美優は言うまでもなく気絶し、そのままその人に連れ去られた。