神様、私を消さないで

道のずいぶん先に、神社の屋根らしきものが見えた。

雅美の家である神社は、この村のシンボル。


「昔、この村は神様を守る村だったらしいの」


少し振り返りながら亜弥子は説明してくれる。


「永神様っていう名前でね、村の名前にもなっているの。その神様を守ることを村人は仕事にしていたみたい」


なんだか昔話に出てきそうな話だけれど、入り口がひとつしかないのもそれなら納得できる。


「他者を寄せつけない神聖な場所だったから、あの吊り橋が必要だったらしいよ」


思ってもみないようなこの村の歴史。

なんだか、神聖な場所というより閉鎖された村であるイメージがいっそう濃くなるように思えた。

振り返ると、興味なさげな顔をしている大和。

そのあとにはうつむいてついてくる広代。



小さくなっていく吊り橋のきしむ音がまだ聞こえている気がした。