神様、私を消さないで

橋の向こうに見える何台かの車は、この村に住んでいる人のものだろう。

この村に来たときは気づかなかったけれど、吊り橋を渡り終えた場所から数メートル手前のところに看板が立っていた。

小さな木でできた掲示板のようなものに、文字が直接彫られている。

近づいて文字を読む。



【秋■■■刻 永神様■■■り 火■野、■を捧げ■ さすれば■■の地となり】



木がボロボロになっていてほとんど読めない。


「ああ、これ?」


目を細めてなんとか解読しようと試みている私の隣に、雅美が立った。


「昔からの言い伝えらしいよ」


「へぇ……」


文字に手を当てるとでこぼこの穴にたまった汚れで指の先が黒くなった。

そうとう古いものなのだろう。


「お父さんに『早く直して』って言ってるのに、まだやってなかったんだ」


亜弥子も雅美の後ろからのぞきこんで呆れた声を出す。