神様、私を消さないで

外に出て確認してみても、もう音がすることはなかった。

家に戻って時計を見ると午後5時前。

なんだかさっき聞いた音が現実ではなく、夢のなかの出来事に思えてしまう。

まだ心臓がドキドキと鼓動を速く打っていた。


「なんだったの……」


つぶやいていると電話が鳴った。

前の人が使っていたという黒電話。

その鳴りかたは、ジリリリとくぐもった音のわりに大音量だった。


「もしもし」


借金取りかもしれない、という恐怖でおそるおそる出ると、『結愛?』とお母さんの声が聞こえた。

急に張りつめていたものが解かれた気分になり、床に座りこんだ。


「お母さん」


『どう、元気にしているの?』


遠い声は、電話のせいか距離のせいか。


「うん。それなりにね」


『そう、よかった。今日から学校でしょう?』

いつだって私を心配してくれるお母さん。