神様、私を消さないで

「ベッド、持ってきたかったな……」


ぬいぐるみも、卒業アルバムも置いてきてしまっている。

持ってこれたのは下着とか洋服くらいのもの。

夜逃げ同然でやってきたから無理もない。

今ごろ失踪騒ぎになっているかも。

それに、大荷物を持ってきていたとしても、あの吊り橋は渡れなかっただろうし。

村に入るためには、手前の空き地に車を置いて、人がひとりなんとか通れるくらいの細い吊り橋を渡らなくてはならないから。


ふと、はじめて車から降りたときのことを思い出す。


まだ新しそうに見える鉄製の吊り橋が音をたてて揺れていた。


――キィ、キィ。


耳障りな音が聞こえてきて、まるで閉ざされた村に入るみたいに思えてゾッとしたっけ。