神様、私を消さないで

ここにはコンビニもなければ、意識しなくても耳に入っていた街角の音楽も、信号の音すらも聞こえない。

とてもずっと住むなんていうイメージがつかなかった。

それに、昔からウソをつくのだけはキライな私の性格。

こんな狭い村ならば、いつかは本当のことがわかっちゃうだろうから。


「うちのお父さん、そんなこともやってるんだね」


村長であるお父さんから本当に聞いていなかったのか、亜弥子が感心したように口にした。


「私としては、また学校に通えたからうれしいけどね」


これは本心だった。

あのままだと永遠に学校に行けそうもなかったから。

それに、友達にもどんな顔をして会えばいいのかわからない。

親が借金まみれだなんて、はずかしすぎる。


「じゃあさ」


雅美が大きな体を乗り出してきた。


「樋口くんのところもそうなのかなぁ。なにか事情があるのかも」


ああ、たしかに、と思う。