神様、私を消さないで

* * *
それは、春休みに入ったばかりの寒い朝だった。

さっきからアパートのドアが何度も鳴らされている。

不規則にドンドンと大きな音で、時折蹴けるような音まで。

「空野さーん。いらっしゃいますかー」

言葉だけは丁寧に、だけど乱暴にドアを打ちつける音。

しなっているドアが今にも割れてしまいそうで、ただ怖かった。

さっきから薄い布団にくるまってじっと耐えている私。

「声を出すなよ」

お父さんが、こんなときなのにおもしろがっているようにヒソヒソ声で言う。

隣の部屋からは、無理やり起こされた赤ちゃんの泣き声が続いている。

不愛想な若い夫婦の子供に違いない。

泣きやんだかと思うと、すぐにドアを鳴らされるのでまた泣きわめく。

その繰り返し。


いろんな騒音に頭が割れそう。