それが爆発したのは、始まって6日経ったときだった。
「……もう我慢できない」
厳しいマナー教育を行っている最中に、ファリス様が部屋を訪れたことで、ほんの少しだけ休憩時間が設けられた。
ファリス様は部屋でふたりきりになりたいと、教育係含め一旦退出させ、自室には私とファリス様だけとなる。
気が緩んだのか、はたまた抑えていた感情が決壊してしまったのか、ファリス様を前についそんな言葉が漏れてしまったのだった。
ファリス様は驚いた表情で私を見つめる。
無理もない。
いつもらしくない、低い声に眉間に寄った皺。
睨むような目つきで、しかも敬語も使わずにそう漏らしたのだから、仕方ないことだろう。
「大丈夫ですか?ビアンカ」
それでもファリス様は気遣う言葉をかけてくれる。
けれどこのときの私は、そんな言葉も火に油だった。
「大丈夫なわけないでしょう!毎日毎日気は抜けないわ、覚えることは多いわ、ミスすれば怒られるわ、なんにも楽しくない!」
どうして私がファリス様のためにやらなきゃいけないのか、という思いが溢れる。


